前回の記事では、新人指導のチェックリストを作った話を書きました。少しずつではあるが、指導を仕組みで支えられるようにする、その最初の取り組みでした。
同じ時期、もう一つ考えていたことがあります。それは、業務の属人化を、少しずつ解いていきたいということでした。
これまで当院のリハ科は、いくつかの業務が特定のスタッフに依存する形で回っていました。「これはあの人がやっている」「これはあの人しか分からない」。これはいちばん効率的な形とは言えなかったのですが、修正するための時間もなく、そのままにしてしまっていた、というのが正直なところです。少人数で、それぞれが自分のできることを引き受けて、なんとか回してきた結果でした。
ただ、スタッフが増えてきて、これから組織として次に進もうとするなら、この属人化は少しずつ解いていく必要がある。そう考えるようになりました。
属人化を解いていく、その目的
属人化を解いていきたい、というのは、単に業務を分けたいということではありませんでした。いくつかの目的が、頭の中にありました。
一つは、業務内容のブラックボックスをなくしたい、ということ。「これはあの人しか分からない」という状態を、少しずつ減らしていきたい。組織として、情報や手順が見える状態にしたい。
もう一つは、雑務や事務業務の効率化を進めて、理学療法士本来のリハビリテーション業務に、十分に時間を使えるようにしたい、ということ。属人化した業務は、往々にして非効率です。「あの人に聞かないと分からない」という状態が、他のスタッフの手を止めてしまう。それを解いていけば、本来の業務に集中できる時間が増えるはずでした。
ここまでは、業務を回すための、いわば表面の目的です。
でも、その奥にもう一つ、当時の自分の中で育っていた思いがありました。
リハ職が努力に対して報われる組織を、どうしたら作れるか
以前、増員をお願いする際に、経営陣に対して数字を用意して交渉した話を書きました。あのとき、自分が目指していたのは、単に人手を増やすことではなく、その先で「もっと良い組織を作る」ことでした。属人化を解いていく取り組みも、その延長線上にあります。
リハ職の仕事は、診療報酬制度の中で成り立っています。取得できる単位数には上限があり、スタッフを増やしても、その上限が変わるわけではありません。単位数を稼ぐことだけを組織の目標にしていたら、スタッフ一人一人の努力を、報酬という形で報いることは、構造的に難しくなります。
単に業務を回して、リハビリの単位を稼ぐだけなら、今まで通りでも大きな問題はなかったと思います。ただ、自分が作りたい組織は、そこではありませんでした。
リハ職の第一の仕事は、リハをして患者を良くすることです。ここは絶対に譲れません。ただ、その上でプラスアルファで、病院全体に貢献できる余地があるのではないか、と考えていました。業務効率化、地域への貢献、病院の認知度向上、患者さんからの評判。リハ科としても、リハの単位という数字以外の形で、病院職員として貢献できることがあるはずだ、と。
そういった貢献ができる組織であれば、リハ職として努力した人が、その努力に応じて評価される道が広がる。単位数だけでなく、多面的な貢献で組織に価値を届けられる状態を作りたい。そのためには、一人一人のスタッフの成長が必要で、その成長には、リハビリテーションをするだけでなく、リハ科全体の動きや組織を見る視点も含まれてきます。
ここまでの筋道は、当時の自分の中で、ある程度はっきりしていました。ただ、それを実現するだけの時間も、人的資源も、まだ十分にはありませんでした。
時間を作る。人を育てる。この二つが必要で、そのための土台作りが要る。属人化を少しずつ解いていくこと、役割を作って任せていくことは、その土台作りの一環でした。
最初からうまくいくとは思っていなかった
いくつかの領域で、少しずつ役割を任せていきました。
以前、ToDoリストを導入したときには、結局いつも特定の頑張るスタッフだけが消化して、負担の偏りを生んでしまった経験があります。その反省もあって、今回は単にタスクを配分するのではなく、明確な役割として任せる形にしました。誰が何を担当するか、責任を持つ範囲がはっきり見えるようにする。
最初からうまくいくとは、思っていませんでした。役割を作ってすぐに、その領域が回るようにはならない。任されたスタッフにとっても、慣れない業務にとまどいがあるはずです。時間がかかるのは、当たり前だと思っていました。
実際、うまくいかない部分は多くありました。役割を任せたつもりでも、細かい判断は結局こちらに確認してくる。任された領域が、他の業務との兼ね合いで進まない。自分が想像していたようには、動いてくれないことも多かった。
そういう場面に出くわすたびに、「まあ、最初からそんなにうまくいかないか」と思って、できるところから少しずつ進めていきました。焦ってもしょうがない。今できる形で、少しでも属人化から離れていければいい。そんな感覚でした。
それでも、何かが引っかかっていた
ただ、時間が経っても、なかなかうまくいかない部分がありました。
「最初からそんなにうまくいかない」は、確かにその通りです。でも、時間が経って慣れてくれば、少しずつ回るようになるはず。そう思っていました。
実際には、そうならない部分が残りました。役割は任せたはずなのに、その領域が組織として機能していない感覚。
正直に言うと、当時は「なぜうまくいかないのだろうか」という戸惑いがありました。「任せるために、ここまで準備したのに」という思いを、抱かなかったとは言いません。
自分の側に何かが足りていないのかもしれない、と気づいたのは、少し時間が経ってからのことでした。心のどこかで、「組織の仕組みとしてもう少し整備しなければ、これは進まないかもしれない」という思いが、少しずつ形になっていきました。
その思いが、後になって、また別の動きにつながっていきます。ただ、それはもう少し先の話です。
皆さんの職場では、業務の属人化を解くために、どんな工夫をされていますか。うまくいった点、いかなかった点、よければコメントで教えていただけると嬉しいです。