前回の記事では、採用の壁に直面し、実習生の受け入れに注力していった経緯について書きました。
今回は、実習指導の中で感じていた葛藤と、その中で少しずつ考え方が変わっていった過程について書いてみたいと思います。
外来リハビリという環境の特殊性
当院は整形外科クリニックです。入院施設はなく、外来リハビリのみを行っています。
この環境には、実習という観点で見ると、いくつかの制約があります。
まず、患者さんは毎日来るわけではありません。週に1回、2回という方も多く、入院のように毎日同じ患者さんを担当することが難しい。
また、外来の患者さんは、わざわざ時間を作り、お金を払って来院されています。入院患者さんとは少し違う感覚があります。セラピストのリハビリを受けるために来ているのに、学生が関わる時間が長くなることへの配慮も必要です。
そうなると、セラピストがつきっきりで学生のやっていることを見ているということも難しくなります。学生が関わる分、セラピストの時間を減らすわけにもいかない。
そんな環境の中で、どうすれば充実した実習にできるのか。ずっと悩んでいました。
業界の変化と、自分の中での葛藤
近年、理学療法士の養成カリキュラムが変わり、実習の制度も変化してきました。
以前は一人の患者さんをケースとして持ち、評価から治療まで一貫して経験していく形が主流でした。現在は、見学から共同参加、実施という段階を踏み、流れを経験することが中心になっています。どちらが良いという話ではなく、求められる到達目標や学び方が変わってきたということです。
この変化自体を否定するつもりはありません。以前の実習が良くて、今が悪いという単純な話ではないと思っています。
ただ、現場での解釈の仕方には疑問を感じることもありました。
「とりあえず、考えさせないで、全部教えればいい」
自分の解釈が正しいかはわかりませんが、現場ではそんな風潮が広がっているように感じることがあります。
また、気を遣わなければならないことが増え、より高いレベルを学生に求めにくくなっているのも事実です。学生の顔色を伺い、良い印象を持ってもらおうと思えば、それもできなくはない。でも、果たしてそれが本当に良い実習なのか。
そんな葛藤がありました。
学生側に依存していた自分への気づき
実習がうまくいかないとき、以前の自分は無意識に原因を学生側に求めていました。
やる気があるか、ないか。知識があるか、ないか。コミュニケーションがとれるか、とれないか。
熱意があっても不器用でうまく表現できない学生もいます。悪気はないけれど空気が読めず、人間関係がうまくいかない学生もいます。育ってきた環境や常識が、自分とは異なる学生もいます。
そういった様々な要因で噛み合わず、良い実習にならないケースがある。それは事実です。
でも、ある時から考え方が変わり始めました。
この頃から、教育や学習論について少しずつ学び始めていました。ただ、まだ体系的に理解できていたわけではなく、試しながら考えを整理していった、という段階でした。
その中で、どうすれば学生のポテンシャルを引き出せるか。どうすれば興味を持ってもらえるか。そう考えるようになりました。
学生の能力に依存するのではなく、指導者側の誘導の仕方を考えなければならないのではないか。
そのために、学生側の心理や、近年の若者の傾向、環境や常識の違いといった観点を意識するようになりました。
スタッフ教育でも、学生指導でも、結局は同じことでした。うまくいかない原因を相手に求めるのではなく、環境や仕組みの問題として捉え直す。その視点を持てるかどうかが、指導する側の課題なのだと思います。
「外来分野で実習を受けることは学生にとって良いのか」という葛藤
もう一つ、ずっと抱えていた葛藤があります。
整形外科クリニックという分野は、理学療法士としては王道ではありません。急性期病院のようにリスク管理や動作介助、チーム医療を幅広く経験できる環境ではない。一つの分野に特化しているからこそ、学べることは偏っています。
そんな環境で実習を受けることは、学生にとって本当に良いことなのだろうか。
一方で、当院のスタッフは皆、プロ意識が強い。学生には少しでも患者さんのためにできるようになってほしいという思いを持っている人が多い。
その思いと、環境の制約と、業界の変化。それらの折り合いをどうつけるか。
理想だけを追い求めても、現実的に達成できなければ意味がない。では、現実的に達成できる範囲で、何を大事にすべきなのか。
そう考えるようになりました。
外来リハの限界と、伝えたいことの折り合い
試行錯誤の中で、少しずつ考えが整理されていきました。
技術や知識を教えることは大事です。学校で学んできたことを臨床の場でどう生かすか、それを経験してもらいたいという思いは今もあります。
でも、それ以上に大事なことがあるのではないか。
患者さんと向き合う姿勢。患者さんを診るためには、もっともっと勉強しなければいけないという気づき。考え続けなければいけないということ。
そして、今学校でやっている勉強が大切であり、実習が終わって学校に戻ってから、より一層勉学に励んでほしいということ。
当時の自分には、この辺りが限界でした。外来リハという環境の制約と、学生に伝えたいことの折り合いをつけたラインが、ここだったのです。
もちろん、これで完成ではありませんでした。ここから少しずつ、試行錯誤しながらブラッシュアップしていくことになります。
次回
次回は、この考え方をもとに、どんな取り組みを試していったのかについて書いていこうと思います。うまくいった点もあれば、うまくいかなかった点もありました。仕組みとして完成したわけではなく、まずはこの意識を持って試行錯誤を続けていった、という段階の話です。
皆さんは、実習指導や後輩指導で、理想と現実の折り合いに悩んだ経験はありますか?よければコメントで教えていただけると嬉しいです。
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