実習指導の標準化を試みた話。うまくいったこと、いかなかったこと

前回の記事では、実習指導における葛藤と、考え方が少しずつ変わっていった過程について書きました。

今回は、意識が変わった段階で、次に必要だった「具体的な仕組み」について書いてみます。

うまくいっていない点はある程度感じていました。ただ、具体的にどうすれば良いのかはわかっていませんでした。ひとまず、自分が担当する学生の時に、良いと思うものをいろいろと試してみよう。そう思って、いくつかの取り組みを始めました。


「資質」という躓き

実習をしていると、いろいろな学生がいます。知識があるかどうか、できるかどうかとは別に、スタッフ間で好感を得られる学生もいれば、そうでもない学生もいる。

実習を良い雰囲気で進めるためには、スタッフ側の意識も課題です。ただ、それを変えるのも一筋縄ではいかない。一方で、学生側にも修正すべき点があるなら、それは修正すべきものとして教える必要がある。「自分で気づいて努力しなさい」ではなく、システムとして教育することが必要だと考えました。

養成校の評価表にも「理学療法士としての資質」といった項目があります。コミュニケーション能力が理学療法士にとって重要なのは確かです。

ただ、実習という環境は特殊です。指導する側とされる側、評価する側とされる側。すでに完成されている環境に、たった一人で飛び込む。数週間から数ヶ月という短い期間の、その場限りの関係性。

そんな中で、本当にその人の資質が測れるのでしょうか。

たとえば、気を遣って思慮深く、良かれと思って邪魔にならないようにおとなしくしている学生がいます。一方で、空気は読まずに思ったことをすぐに言葉にする学生もいます。「積極的なコミュニケーション」という観点では、後者の方が評価されるかもしれません。

でも、実際に働き始めて時間が経ち、関係が構築されると、その評価が逆転することもあります。

実習という特殊な環境下では、本来の自分の持っている能力を発揮できない学生が多いように感じました。また、社会人としての経験も少なく、「できない」のではなく「知らないだけ」であることも多い。

それを何とかできないか。そう考えて、資質という曖昧な評価項目を、具体的な行動レベルに分解し、ステップアップ方式でチェックリストを作成しました。


目標設定を学生自身にさせる

もう一つ試みたのは、学生自身に目標設定をさせることでした。

近年の実習形態は、どうしても受動的になりがちです。見学から共同参加、実施という流れの中で、「言われたことをやる」という姿勢になりやすい。

そこで、実習自体の目標を自分で立ててもらうようにしました。

目標は、理学療法と同様に長期目標から短期目標へと落とし込む形にし、長期目標の達成のために短期目標を3〜4ステップで設定する。達成できたか・できなかったかを判定できるようにする。達成するための具体的な行動も記載する。

これを、社会面と勉強面のそれぞれで取り組んでもらいました。

自分で目標を立てることで、実習が「やらされるもの」から「自分で取り組むもの」に少しでも変わればいい。そう考えていました。

また、実習のためだけでなく、将来的に自分自身のキャリアデザインをセルフマネジメントできるようになるためのきっかけになればという思いもありました。


うまくいった点

これらの取り組みには、一定の効果がありました。

チェックリストを用いることで、他のスタッフに進捗状況を伝えやすくなり、「今この段階まで進んでいる」「次はここを目指している」ということが、指導者間で共有しやすくなった。

学生側にとっても、次に何を目指せばよいのかがわかりやすくなりました。「どうすれば良いのかわからない」という戸惑いが減ったように思います。

目標設定についても、自分で考えることで、実習に対する主体性が少し生まれたように感じました。


うまくいかなかった点

一方で、課題も見えてきました。

チェックリストは学生と共有し、週1回一緒にチェックする形で運用していました。

ただ、学生によっては「リストに載っていることだけやればいい」という思考になってしまうケースがありました。チェックをこなすことが目的になり、本来の意味が薄れてしまう。

また、チェックをつける「合格レベル」の判断が、学生によって違うという問題もありました。こちらがチェックしてもいいと思うレベルでも、慎重でチェックをつけない学生もいる。逆に、まだチェックはつけられないだろうというレベルでも、できたと判断してしまう学生もいる。

どこまで何をすればよいかという基準が曖昧で、結局はメタ認知能力に依存してしまうと感じました。本人は挨拶をしているつもりでも、周りからは足りないと言われる。質問しているつもりでも、周りから見ると少ない。そういった、自分を客観視できないことへのギャップを、指導者とのフィードバックですり合わせていく手段としては機能した部分もあります。ただ、その「すり合わせ」自体が、結局は指導者側の主観に頼ってしまう側面もありました。

さらに、チェックリストはどうしても一般化されたものになるため、個別性に対応しきれない場面も生じました。どこまでリストの通りに進めて、どこから個別性を出して対応するか。その線引きが、結局は感覚に頼ってしまう部分が出てきたのです。リストの内容自体が、まだ不十分だったのかもしれません。

資質の確認リストに関しては、さらに別の課題もありました。人によっての「当たり前」に個人差があるということです。

指導者側が「当然できているだろう」と思っていることと、学生の認識にズレがあるケースがありました。どちらが正しいという話ではなく、その「当たり前」の基準が人によって違うということです。

それを反映してあまりにマイクロに項目を増やすと、今度は学生の心理面にマイナスになるのではないかという懸念もある。どこまで細かくするか、その塩梅が難しいと感じました。


完成ではなく、途中経過

ここまで書いてきた取り組みは、完成した仕組みではありません。

うまくいった部分もあれば、うまくいかなかった部分もある。仕組みを作ることで解決できる部分と、仕組みだけでは対応できない部分があった。

次回は、理学療法場面での課題や、さらにブラッシュアップしていった内容について書いていこうと思います。

皆さんは、実習指導や後輩指導で、仕組み化を試みた経験はありますか?うまくいったこと、いかなかったこと、よければコメントで教えていただけると嬉しいです。

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