前回の記事では、実習生からの就職が増えてきた頃のことを書きました。新人がコンスタントに入ってくるようになり、組織の状況が変わり始めていた頃です。
継続して成長する組織にしていくためには、特定のスタッフに依存するのではなく、指導できるスタッフを育てていくシステムにしなければならない。これは、以前から常々考えていたことでした。それが、スタッフが増えてくるにつれて、現実味を帯びてきた。そんな感覚です。
そこで取り組んだのが、新人に身につけてほしいスキル・知識をまとめたチェックリストと、それと連動した年間スケジュールの作成でした。
チェックリストと年間スケジュールの中身
チェックリストは、いくつかの領域をカテゴリで分けて作成しました。技術面、知識面、業務面など、新人として身につけるべきことを、項目に落とし込んでいく。
それと併せて、年間スケジュールを組みました。4月にはOJTで何をやり、OFF-JTで何をやるか。持ち患者数はどれくらいを目安にするか。いつから膝疾患を見始めて、いつから肩疾患を担当するか。具体的に時系列で並べていきました。
そのうえで、2年目までを見越した構想も整理しました。1年目で何をどこまで、2年目で何を、と段階的に。
運用としては、特定の指導者だけを新人につけるのではなく、チームで全体に指導する形にしました。理由はいくつかあります。一人の指導者に負担が集中しないように、ということ。新人が特定のスタッフの考え方だけに偏らないように、ということ。そして、後輩指導そのものを学んできたスタッフが多かったわけではなく、組織としてもまだ指導の経験値を積み重ねている段階だった、ということ。
そのうえで、自分が細かい知識や学習の指導を担当する。チェックリストと年間スケジュールを軸に、複数のスタッフで新人を育てる体制にしようとしたわけです。
うまくいった部分
実際に運用してみて、いくつか手応えのあった部分がありました。
一つは、自分自身が「教えるべきこと」を整理できたことです。
それまで、新人に何を教えるかは、頭の中にぼんやりとあるだけでした。経験的に「これを教えたほうがいい」「これは早いうちに身につけてほしい」と判断していた。でも、それを言葉に落とし込んだことはなかった。
チェックリストを作る過程で、これを言語化することになりました。結果として、教え忘れがなくなった。「これも教えておくべきだった」と後から気づく場面が減った。
もう一つは、新人の側です。
「何を勉強すればいいかわからない」という状態に陥りにくくなりました。新人にとっては、目の前にやるべきことが見えているのは、それだけで安心感があります。チェックリストがあることで、何から手をつければいいかの目印になった。
そして、3つ目。書いてあるものと、新人ごとの進捗や進行度合いが、ある程度統一されるようになりました。誰がいつ何を学んでいるかが、組織として見えるようになった。これによって、新人指導の標準化を進めやすくなりました。
ここまでは、チェックリストと年間スケジュールを作ってよかったと感じる部分です。
うまくいかなかった部分
ただ、運用していくうちに、いくつかの課題も見えてきました。
特に、最初の数か月、こちらが密に指導している時期には機能していたチェックリストが、少しずつ手を離していった段階で、うまく回らなくなっていきました。
理由は、いくつかありました。
一つは、チェックリストが「大枠」にとどまっていたことです。「これを身につける」とは書いてあっても、「どの文献を使って、どう学ぶか」という具体的な進め方までは指示できていなかった。新人にとっては、何を学べばいいかは見えても、どう学べばいいかは見えていなかった。
もう一つは、優先順位の共有不足です。指導者側は「まずは基礎を固めてほしい」と思っているのに、新人は応用的なところに興味を持って手を出す。学習の優先順位が、噛み合っていなかった。
そして、もう一つ。少し時間が経つと、チェックリストの存在自体を忘れてしまう。最初は意識して見ていたものが、だんだん意識から外れていく。
これは、新人個人の問題ではないと思っています。チェックリストを順番に進めていった先に、何があるのか。その「ゴール」が、十分に共有できていなかった。だから、続けていくなかでチェックリストの存在自体が薄れていったのだと思います。
それでも、満足できなかった
ここまで書いてきた「うまくいかなかった部分」は、運用上の課題です。詳細度を上げる、優先順位を伝える、定期的に振り返る。そういった工夫で、ある程度は改善できる類のものでした。
ただ、それとは別に、当時の自分の中には、もっと漠然とした不満が残っていました。
新人1年目という範囲で見れば、チェックリストには確かに効果がありました。仕事に慣れて、ある程度はこなせるようになっていく。それは間違いない。
でも、自分が作りたい職場は、組織として回っていればそれでいい、というものではありませんでした。理学療法士という、努力が報われにくい環境のなかで、それでも成長したいと思える人がいるなら、その思いに応えられる場所にしたい。ここで働く人が、自分の価値を高められたと感じられる場所にしたい。
そういう理想に向かって、チェックリストは確かに一歩前進ではあった。でも、それだけでは何かが足りない。当時、その「足りなさ」を、うまく言葉にできずにいました。
その正体に気づくのは、もう少し後のことになります。
皆さんの職場では、新人教育のマニュアルやノウハウを、どのように整備していますか?うまくいった点、いかなかった点、よければコメントで教えていただけると嬉しいです。
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